転らぶ (なー。ひー。交換小説)

なな。と、ひひ。の二人で作っていく世界です。

力を使わぬものたち。

「うーん。でも、どうしようかな。」 脱出を目論むナナリアの独り言は、小さい声ながらも、閑散とした広い洞窟内では、それなりに響いた。 考えていると、不思議と向こうからチャンスは舞い込んでくるもので、その声が消えかけた時、何やら洞窟内を歩く、カ…

力を使わぬものたち。

ーーどうして。こんなことになってしまったのだろう。 薄暗い牢屋の中、ナナリアとクラゲは身を寄せ合い、隅っこの方で小さくまとまっていた。 檻には小さな小窓があり、その前に、パンと少し冷めたスープ、この村で採れたであろう野菜のサラダと、水の入っ…

薄い青色のそれ。

ふわふわと浮かんでいる。 目の錯覚かと思った。 ふわふわと浮かんで近づいてくる。 異世界ならこういうこともあるのかなと思った。 「その声は昨日聞いた声かな」 ヒロは冷めた口調で聞く。 「そうなのらー。昨日は飛び降りるかと思ったのらー」 淡い青色の…

できないことは不幸せなことなのだろうか。

望まなくても、目覚めるものだ。 何もなくても、世界が広がっていることはわかる。 世界が色あせていくように思えても、目が覚めれば、光を帯びた景色が見える。 ヒロロンという人物のことはみんなが知っているが、ヒロという人物については誰も理解できない…

ひーくんのお誕生日記念。シークレット特別編。

異世界。それは想像する世界。 だから、ひーくんのお誕生日という日を一緒に過ごすことができる、もうひとつの世界のことだろう。 これは、私の幸せで痛い妄想のお話。笑。 「ーーほぉらッ!起きて、尋!」 急にかけていたタオルケットを取り上げられ、ベッ…

力を使わぬものたち。

ずっと急ぎ足で道をひたすら進み続け、やっとの思いで村の入り口まで来た頃には、さすがのナナリアの息も上がっていた。 息を少し整え、村に一歩踏み入れた時だった。 ーーザザッーー。ザザザッーー。 一瞬にして、ナナリアは何人もの村人に囲まれてしまった…

力を使わぬ者たち。

「……もう、だめ。むりーー。」 奈々を乗せて飛んでいたクラゲは、 徐々に地面へとゆっくり近づいていた。 「ごめん。クラゲさん…。 私。その…重かった?」 「…!違うの、奈々。えっとね……」 クラゲが何か言いたそうにもじもじしている。 「?」 首を傾げるナ…

あの頃と今。

ーー「…尋の場所は分からない。 私も…尋を探してるの。」 ナナリアの答えに少女奈々は微笑む。 「…そうなんだ。 嘘じゃないようだね。 なら…私があなたより先に尋を見つける。 悪いけど…尋は渡さない。 もう…離れたくないの。ごめんね。」 そう言って少女奈…

あの頃と今。

深い霧の中、これは幻なのだろうか。 少女奈々は、目を逸らすことなく真っ直ぐナナリアを見つめる。 その目線は冷たいながらも瞳の奥は吸い込まれる程にどこまでも澄んでいるように見えたが、どこか歪であやふやなものが瞳に少し影を落としていた。 ナナリア…

崖の上から見下ろす世界

奈々がいない世界なら要らない。 そう考えると、ここに存在することすら違和感が出てくる。 上手く笑える時もあるが、どうでも良くなってしまう時もある。 突発的に存在すること自体に拒絶してしまうようだ。 そんな時は、町を見下ろせる場所に行ってしまう…

あの頃と今。

どれくらいの時間、空の上で過ごしただろう。 ナナリアのお屋敷からは、かなり離れた場所まできたのか、見慣れない景色と動植物が増えてきていた。クラゲの上はぷるぷるなのに人が乗ると収まりが良く、なんとも言えない心地よさがある。子供の頃夢に見るよう…

何もなくても笑える。

涙が止まる。 涙が止まると、本当に何もかも失くしてしまったような気がした。 ハルルンが心配そうにヒロを見ている。 ヒロは優しく微笑む。 「ごめん」 ヒロは、誰かに自分を見せることを嫌っていた。本当の自分を見せることが誰かを悲しませるような気がし…

空っぽな自分

空っぽだ。 奈々がいないと、空っぽだ。 どの世界にいても、どこにいても、奈々がいないなら、全てが無意味に思える。 空っぽだ。 ヒロは、立ち止まって空を見上げる。 空っぽだ。 空っぽなのに。 何故か涙が出た。 何もないのに。 自分でも止められない涙が…

孤塔からの脱出。

「ーー奈々!こっちからなら行けそう!」 クラゲはナナリアの部屋の窓から外を覗いていた。 ナナリアもクラゲの元へと駆け寄る。 どこまでも続く青に、際立って大きい入道雲の数々、目が眩むくらいの光に視界を遮られ、下を見ると、遥か下に薄ら地面が見えた…

十何年ぶりに再会した私たちは転生してもらぶらぶでした。

機械音が現代とは微妙に違う。擦れ合うような音がキラキラしていて、心地よい音色を奏でているようだ。どこかで魔法というものが混じっているからなのだろうか、ここは魔法が使えない人たちが集まってできた場所のはずなのに。 ヒロは、町を散策していた。初…

孤塔からの脱出。

怖いくらいの静けさを感じたことはあるだろうか。 先ほどまで、この場所で激しい戦いが繰り広げられていたとは思えないほどの静けさ。 焼けてしまった部屋の真ん中に、父からもらったうさぎのぬいぐるみが大半は焦げていたが、辛うじて原型をとどめ佇んでい…

恐怖の渦とその中心。

ーーパチパチと何もかもが焼けていく音がする。 悲鳴を含む血の匂い。 どこからかも分からなくなるような、無数の爆発音。 真剣な眼差しと怯える体。 その全てを感情のない炎が焼き尽くしていく。 ーー「…この世界を滅ぼす…?…私が?」 「…はぁ。まさかここ…

恐怖の渦とその中心。

どれくらいの時間が経っただろう。 気づけば奈々は、ベッドで寝てしまっていた。 ーーあたたかい。 まるでサウナのような、ヒリヒリする温かさだ。 ーーッ!ヒリヒリ!? 慌てて起き上がると、目の前には信じられない光景が広がっていた。 これも夢なのだろ…

転生した尋の朝

窓から太陽の光が差し込む。人影が窓を開ける。ささやかな風が肌に触れて、尋は目を開けた。 「ごめん、起こした?」 人影がそう言った。 尋は、疑うように、その人影を見る。誰だかわからない。 「ずっと締め切っていると、空気が悪くなると思って……」 申し…

恐怖の渦とその中心。

朝、目が覚めると、頭の痛みも、いつの間にかすっかり治り、視界も、どことなくスッキリして見えた。 「ーーくらげ…さん?」 ーー…夢? 昨日のことが、全て夢に感じる。 奈々は、昨日のことを思い出しながら、部屋の天井にある壁画を、ぼーっと眺めていた。 …

転生した尋の状況

(僕は、書けるときに書くつもりだけれど、あまり頻繁に更新できなくて、独りぼっちさを感じさせたくないので、ちょっと文章量は少なくなるかもしれないけれど、ちょこちょこと書いていこうと思います。) どうやら誰かの身体に入っているようだ。尋は、そう…

転生したけどどうなったの?

再びドアに鍵がかかると、奈々は一人またベッドに戻り思いっきり寝そべった。 「ーー尋に会いたい…」 尋と言う名を口にした瞬間、押さえていた涙が少しだけ頬を流れた。 ーー尋はどうなったんだろうか。 確かにあの時、ふたりで崖から落ちたはずだ。 私はこ…

転生したけどどうなったの?

ふと目を開けて、ベッドから体を起こすも、相変わらず頭が重い。 ひとつ溜息をつくと、奈々は、部屋を見渡した。 古いアンティークの家具で、全てが揃えられている。 一見、豪華そうに見える家具は、あまり手入れされていないのか、薄ら埃を纏っている。 一…

転生した尋のほうは

尋は気付くと、ベッドの上で横になっていた。 奈々の手から伝わる体温はまだ残っていたが、身体に違和感を感じる。起き上がろうとしたが、身体が言うことを聞かない。横になったままで、周りを確認する。 病室ではないようだ。 薄い青色の壁は金属みたいに鈍…

余談1 (マニア向けかも)

こんにちは。なな。です。 初っ端から句点が多くてすみません。 いよいよ、始まった『転らぶ』ですが、 『十数年ぶりに再会したふたりは転生してもらぶらぶだった』の略です。 ここで言うことかは分かりませんが。笑。 さて、とてつもなくベタベタな展開で始…

そして転生するふたり。

「結婚しよう」 尋の突然の言葉に、奈々は驚かなかった。 驚かない代わりに、目を潤ませながら、尋の方を見て、昔と変わらぬ笑顔で、無邪気に微笑んだ。 それを見て、尋も相変わらずだなと、困ったように優しく微笑む。 辺りは暗くなり、初夏の風は少し肌寒…

転生する前で、再会した時の僕からの

(ずっとこういう話を書き続けちゃうんで、ななちゃんが書きやすくなれるところまでは、ちょっと端折ります) 何回か直接会って、話をした。 君は、ずっと僕のことを好きだったと言った。色々あったけれど、僕じゃなきゃダメだ、と。 僕は、人生で一番君のこ…

転生する前で、再会した時の僕。

君からの反応は、僕の予想よりも早かった。 ちょっと話がしたいんですが。 君らしいな、と僕は思った。それに、あぁ君なんだな、とも思った。 僕の知っている君は、いつも突然で、いつも僕の想像の外にある行動を取ってくる。ほかの人が僕にそういう接し方を…

転生する前で、再会する前の僕

僕は、いつも通りの日常を送っていた。 若い時はそれなりに仕事を必死にこなしていた時もあったが、今はもう仕事を最優先にする生活をしていない。むしろ自分の時間を楽しんでいることのほうが大切になっている。 趣味的に始めた動画配信やSNSも、気分が乗ら…

転生なんて聞いてない。

お菓子でできた街、光り輝く石の砦、猫のような兎のような不思議な生き物、キリンと恐竜が混ざったような凶暴そうな生き物。 歩いていると、現実からはかなりかけ離れた情景が広がっているのに、 どこか全てが懐かしく、見覚えがあるような気がした。 奈々は…