力を使わぬ者たち。
「……もう、だめ。むりーー。」
奈々を乗せて飛んでいたクラゲは、
徐々に地面へとゆっくり近づいていた。
「ごめん。クラゲさん…。
私。その…重かった?」
「…!違うの、奈々。えっとね……」
クラゲが何か言いたそうにもじもじしている。
「?」
首を傾げるナナリアの下、クラゲのおなかがぐぅー。と大きな音を立てて鳴いた。
「……お腹すいたのーーー!!!」
そう言ってついには、クラゲは地面へとへたれ込んだ。
とっさにクラゲから降りたナナリアは、
心配そうにクラゲを優しく撫でる。
巨大化していたクラゲは、いつの間にか元の大きさへと戻っていた。
「ごめんね、クラゲさん。
そうだよね。もうしばらくお水と少しの木の実しか食べていないもの。
どこか近くに街があればいいんだけど…。」
森を抜け、あたりは草原が広がっていた。
ぐるっとあたりを見渡すと、草原のその先に小道があるのに気づいた。
「ーー!くらげさんッ!
あっちに道がある。人がいるところへと続いているかもしれない。いってみよう!」
ナナリアはクラゲを両手で抱きかかえ、立ち上がった。
クラゲはこんなにも軽いものなのだろうか。
冷んやりしていてぷにぷにという感触はあるのに重さというものがあまり感じられない。
ここが異世界で、この世界では自分の常識や知識など何の意味も持たない。
分かっていたはずなのに…。
急激な不安がナナリアを襲った。
が、ふと良く考えてみると、思い返せばそんな中でも、いつもクラゲだけはナナリアのそばに居てくれたのだ。
クラゲの底なしの明るさに、優しさに何度助けられてきただろう。
この世界で今まで生きてこられたのも、クラゲの存在があったからだ。
力なくナナリアの腕の中に身を寄せるクラゲを見て、不安を一気に払うと、ナナリアは小道へと真っ直ぐ足を急いだ。
1時間近く歩いただろうか。
小道は木々に囲まれていたが、
明らかに人工的にできたものだった。
クラゲは眠ってしまったようだ。
すうすうと寝息をたてるクラゲを見て、ナナリアはひとまずホッと胸を撫で下ろした。
また歩みを進めると、少し先に小さな村が見えた。
ここまで歩いてくる途中、誰ともすれ違うことがなかったことには少し疑問を覚えたが、クラゲのことを思うと迷っている暇はない。
ナナリアはまた早足でその村へと急いだ。
なー。