転らぶ (なー。ひー。交換小説)

なな。と、ひひ。の二人で作っていく世界です。

ひーくんのお誕生日記念。シークレット特別編。

異世界。それは想像する世界。

だから、ひーくんのお誕生日という日を一緒に過ごすことができる、もうひとつの世界のことだろう。

これは、私の幸せで痛い妄想のお話。笑。

 

「ーーほぉらッ!起きて、尋!」

急にかけていたタオルケットを取り上げられ、ベッドに丸まる尋を、少し膨れた顔で見る。

「もう。今日は、大事な日だっていうのに…。」

そう言いつつも、呑気に眠たそうにしている尋を少し可愛いと思う自分に気がつくと、いつも少しだけ気が抜けてしまう。

「…んー。…奈々。」

眠そうに私の名前を呼ぶ尋に、きゅんとしてしまっては、負けなのだ。

負けなのだが…。

「…あー、もう!」

なす術もなく、せっかく取り上げたタオルケットを尋へと放り投げた。

すると、タオルケットの中から急に手が伸びてきて、その手によって、私は気がつくと、ベッドへと引き込まれてしまっていた。

「…奈々。もう起きるの?」

尋の声が後ろから聞こえてくる。

完全に後ろから尋に捕まってしまった。

こうなると、もはや起きるまで長期戦だ。

負けを覚悟して、仕方なく眠りにつこうとした時、部屋のドアが勢いよく開く音がした。

「ーーハッピーバースデー、尋!」

ピンク色のぷるぷると水色のぷるぷるが、勢いよく現れて、巨大なクラッカーをパーンッと鳴らした。

「ーー!クラゲさんたちっ!」

私はベッドから飛び起きて、尋から慌てて少し離れた。

「…あれ?なんか、お邪魔だった?」

ピンクのくらげがからかうように、にやにやしていると、となりにいる水色のくらげが、ため息をつき、尋を起こそうと、尋の腕をつつき出した。

さすがの尋も、この騒がしさには勝てないらしく、ぼーっとする頭の中、めんどくさそうに体を起こし私の横へきて、そのままベッドへと腰掛けた。

「…何をそんなに騒いで…。」

あくびをしながら、状況がいまいち分かっていないであろう尋は、眠そうに私の方を見た。

私が少しすねてると思っているのだろう。

尋は優しく私の頭を撫でる。

それでも無言でいる私のことを、心配そうな顔で覗き込む。

「……奈々?」

「…あっちに。」

「ん?あっち?」

「あっちに…いこ?」

そう言って、私は隣の部屋を指差した。

この家は、この異世界でふたりで暮らすために、ふたりで頑張って商売をして手に入れた、ふたりだけのおうちだ。

クラゲたちもここに居着いているが、まわりは森に囲まれていて、近くには綺麗な湖があるくらいで、野生のモンスター以外は誰も居ない。クラゲに乗って街へ行く他、この辺りから出ることはなく、のんびりとふたりで過ごしている。

私が尋をひっぱると、言われるがまま、尋は隣の部屋へと連れて行かれた。

隣の部屋に入ると電気が消えていた。

何も見えない中に、いい匂いが少しする。

どれくらい寝ていたのだろう。と、尋は窓の外へと目をやるも、外も夜なのであろう真っ暗だ。街から帰ってきてすぐに、尋はソファーでくつろぎ出し、少し経つといつものように、うとうとしだしていた。ベッドで寝ないと体を痛めるし、体に悪いからと、いつも私が無理矢理ベッドまで連れて行って寝かせている。今日も、そのいつも通りのパターンだったのだ。

「…せーのっ!…『尋、お誕生日おめでとう!』」

私とクラゲたちが声を合わせてそういうと、ぱっと部屋の電気がついた。

色とりどりの飾り付けされたお部屋、テーブルの上には尋の大好物のブルーアイボリードリの卵を使った料理たちが並んでいて、テーブルの中央には奈々特製のケーキに、尋の年の分、ロウソクがささっていた。

私がはしゃぎながら、尋にロウソクの火を消させて、ケーキを一口尋の口元に運ぶ。

尋がにこにこしてくれるから、私の方がよりはしゃいでしまっていた。

こんな幸せな日が、これからも永遠に続きますように。

 


               なー。