力を使わぬものたち。
ーーどうして。こんなことになってしまったのだろう。
薄暗い牢屋の中、ナナリアとクラゲは身を寄せ合い、隅っこの方で小さくまとまっていた。
檻には小さな小窓があり、その前に、パンと少し冷めたスープ、この村で採れたであろう野菜のサラダと、水の入ったピッチャーが置かれている。
ナナリアは、少し立ち上がり、パンを持つと、クラゲの口元へと、一口大にちぎったパンを運んだ。
「ーー!…ぱくッ。むにゅむにゅ…。」
クラゲは寝ぼけながら、パンに必死で食らいつく。よっぽどお腹が空いていたのであろう。
クラゲはパンを全部たいらげると、また、安心したかのように、深い眠りについた。
それを見てナナリアも、クラゲにくっつきながら、重い目を閉じた。
閉じた目の裏側に、尋の優しい笑顔が浮かぶ。
言いようのない不安と、底知れぬ恐怖。
ナナリアの心もまた、限界だった。
頬を涙がつたって流れては、冷たい地面へ吸い込まれて、何もなかったかのように消えていく。
自分の存在をも、消すかのように。
此処に居ることは、誰も知らない。
誰も、助けには来てくれない。
だったらーー
自分から、抜け出すしかない。
待つだけでは、何も変わらないから。
ナナリアは、ゆっくり目を開けた。
(なー。)