力を使わぬものたち。
「うーん。でも、どうしようかな。」
脱出を目論むナナリアの独り言は、小さい声ながらも、閑散とした広い洞窟内では、それなりに響いた。
考えていると、不思議と向こうからチャンスは舞い込んでくるもので、その声が消えかけた時、何やら洞窟内を歩く、カツカツという物音が、こちらへと近づいてくるのが聞こえた。
「…女よ…生きているかい?」
足音が近づき、声のする方を見てみると、薄暗い視界から、先程ここへと、ナナリアを閉じ込めた老婆の顔が見えて、一瞬、ナナリアの顔が、少しだけ強張る。
黙っていると、老婆は檻の鍵を外し出し、あろうことか、檻の扉を開け、こちらへと入ってきた。
そして、ナナリアの目の前に立つと、ふわっとナナリアの前へ、手を差し伸べた。
一瞬、何かの攻撃を受けるのかと思ったナナリアが、ビクッと体を震わせ、瞬時に目を閉じる。
ぎゅっと瞑ったまぶたを、少しだけ薄く開くと、ただただ、温かい老婆特有の優しい手があるだけで、事態が分からず混乱するだけのナナリアに、老婆は一言だけ、こう告げた。
「……出てこい。イヴ様が、お呼びだ。」
(なー。)