崖の上から見下ろす世界
奈々がいない世界なら要らない。
そう考えると、ここに存在することすら違和感が出てくる。
上手く笑える時もあるが、どうでも良くなってしまう時もある。
突発的に存在すること自体に拒絶してしまうようだ。
そんな時は、町を見下ろせる場所に行ってしまう。
ここから飛び降りれば、この世界から居なくなれる。
奈々が居ない世界に何の未練もない。
町を見下ろす。
全てがちっぽけで、全てが遠い世界に思える。
「飛び降りるの?」
酷く冷静な声が聞こえる。
幻聴だと思った。
自分自身の声に思えた。
「そこから飛び降りるの?」
今度ははっきりと耳元で聞こえた。
振り返ってみる。
それは、ふわふわと浮かんでいた。