恐怖の渦とその中心。
ーーパチパチと何もかもが焼けていく音がする。
悲鳴を含む血の匂い。
どこからかも分からなくなるような、無数の爆発音。
真剣な眼差しと怯える体。
その全てを感情のない炎が焼き尽くしていく。
ーー「…この世界を滅ぼす…?…私が?」
「…はぁ。まさかここまでとはね。
おまえは何も分かっちゃいない。
自分が何者なのか、どうして皆がおまえを恐れ、遠ざけようとするのか。
ーーおまえは、滅亡の悪魔だ。」
呆然と座り込むナナリアの横でクラゲがレイを睨む。
「…滅亡の悪魔……」
「…おまえはこの世すべてを破壊する。
力をつかえば、跡形もなく、この世界は一瞬にして滅びるだろう。
そして、その力はお前自身の身をも滅ぼし、破滅する。」
「…そんなこと…私にそんな力、あるわけない!」
「ならば、滅ぼしてみるか?
…誰かを守りたい。誰かを救いたいだのと。
そんなこと、おまえにできるわけがないだろう?
おまえが守りたいものも、救いたい命も、おまえが奪う。
…おまえは、誰も守れやしない。」
レイは俯き、表情が見えない。
しかし、その声は無機質に冷たく、強い拒絶と、嫌悪を表していた。
「……わかったら、大人しくしていろ。」
レイは立ち上がりナナリアを見ることなく、その場を立ち去っていった。
クラゲがナナリアに寄り添おうとするが…
「ーー来ないでッ!私に近づかないで…。」
とっさにでた言葉に、奈々はハッとしたが、もはやもう何もかもどうでも良くなっていた。
クラゲは悲しそうにしていたが、奈々から離れることはなかった。
絶望というのは、度々訪れる。
そして、破滅もまた一緒にやってくる。
どんなに積み重ねた日々も、燃えるような熱い気持ちも、強い絆で結ばれた信頼も、一言で終わりを告げ、一瞬にして消える。
破滅的思考は、誰も守れないのか。
奈々が失ってきたもの。
全て失いたくはなかったものだった。
それは奈々の気持ちとは裏腹に、残酷に壊されていった。
誰の仕業でもなく、自分の手で。
そうして自らを破滅へと追い込む。
なんで、守れなかったんだろう。
あの時、こうしていたら少しは違っていたのだろうか。
そんな後悔ばかりが押し寄せては、居場所を失い消えていく。
「尋…私、負けそうだよ…」
(なー。)