転生なんて聞いてない。
頭が痛い。
確か私は尋にプロポーズされて…
重い瞼を開けると青い空が急に視界いっぱいに飛び込んできた。
雲ひとつない快晴。
あれ。なんだ。朝になったんだ。
空にはドラゴンが飛んでいる。
…。
「ドラゴン!?」
慌てて体を起こすも、起き上がった体は軋むように痛い。
ああ。きっと夢だ。
私は自分の頬をつねる。
辺りは草原。どこまでも青々と緑が続いていた。
「ナナリア様!」
広がる草原の中、声のする方から数人の兵士らしき人々が駆け寄ってくるのが見えた。
「心配しましたよ!急にドラゴンに乗って飛び出したりして。」
そのうちの一人が焦った表情でそういうと、奈々の隣に座った。
「ナナリア…?」
聞き慣れない名前に奈々の顔は歪む。
そんな奈々に対して、周りはざわざわと戸惑いの声をあげているようだった。
「ナナリア!頭の打ちどころでも悪かったのか?
…ああ。元々おまえはそんなものか…。」
兵士たちの後ろから、一際立派な鎧に身を包んだ男が、急に不躾な態度で近寄ってくる。
銀髪の髪は風に繊細に揺れ、青い目は鋭くこちらを睨む。整った顔立ちとは打って変わって、表情は冷淡で、恐怖すら覚える程だった。
「レイ…」
とっさに出た言葉に奈々は驚き、また口を紡いだ。
「なんだ。その調子なら大丈夫そうだな。」
そう言って、彼は他の兵士たちへ何か指示を出したかと思うと、早々にドラゴンに乗り立ち去っていった。
奈々は兵士らに連れられ、道なき道を歩き出す。
(なな。)